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飯がまずいとすぐ満腹になった気になる。
舌と消化器系がそれ以上のその食物の摂取を拒絶するからだろうか。
私が今働いている職場の周辺は飲食店が比較的多いがハズレ店の割合が多く、地雷をよく踏んだ。
それも対戦車地雷クラスの大ハズレ店が一つや二つではなかったから恐ろしい。
「毎日違う飲食店で昼飯を食う」という自らに科したその掟に忠実だったばかりに、そこで働き始めて一か月くらいは、毎日アドベンチャーを強いられていた。
牛焼肉と称しているが、明らかに牛肉ではない獣臭漂う牛焼肉定食800円、パスタが極太ソウメンか細めのうどんとしか思えない、『イタリアうどん』と言うべきミートスパゲティ、店主の創作意欲が暴走した結果、見た目も味もカオスな鉄火丼などなど。
ものすごく腹が減っているはずなのに残してしまい、空腹以上の飢餓レベルでないと完食は不可だと思えるくらいで、その日の午後の仕事のパフォーマンスにも悪影響が及ぶほどの違和感と不快感がトラウマレベルで口の中に残留した。
私の神聖な昼食時間を侵した罪に時効はない。
そんな店には一生入る気がないばかりか、腹いせに同僚にもこの店はハズレだと積極的な啓蒙活動まで行っている。
昼飯がまずいと、生活までもがつらくなる。
だが、その時の私の場合はまだましと考えるべきだろう。
確かにハズレ店もあったけど、「この店また行こう」というアタリ店や「まあまあだな」という安全店も多かったし、まずい店は二度と行かなければ良いだけなのだから。
毎日決まったメニューでそれ以外選択の余地がなく、しかもことごとくまずい場合こそヤバイ。
2017年、神奈川県中郡大磯町の公立中学の学校給食が半端じゃなくまずいと生徒の間で評判になったことが報道された。
調査によると給食の残食率が全国平均の6.9%を大きく上回る平均26%で、多い時には55%。
あるクラスでは生徒31人中完食したのは1人であったらしいから凄まじい。
きっと学校生活にも暗い影を落としたはずだ。
毎日そんなもんを食わされた生徒には同情を禁じ得ないし、そんなもんを恥ずかしげもなく提供した業者はテロリストに等しく、怒りを覚える。
私が他人事ながらそう思うのは、
昔、同じ地獄を味わったことがあるからだ。
学校を出て最初に働き始めた印刷会社の社員全員の昼食は毎日配達される弁当だったが、その弁当が半端じゃなくまずかったのだ。
その会社で働いたのは二年にも満たなかったが、その弁当を完食できた記憶がない。
私はどちらかと言えば好き嫌いが激しい方であることは認めるけど、他の社員もみんなまずいと言って残してたんだから本当にまずかったはずだ。
「美味しかった」か「まずかった」か
ではなく、
「我慢できる」か「我慢できない」かの二択しかない代物
が毎日選択不可で有無を言わさず支給されてたんだからたまらない。
普通昼食というものは、「今日は何食べようか?」「今日のメニューは何か?」と楽しみなものであるべきだが、
そこでは昼になると「今日は何を食わされるのか」不安を覚えていた。
昼休みになるのがあんなに憂鬱だったのは後にも先にもあの会社で働いていた時だけだ。
その弁当代は毎月の給料から差し引かれていたが、食べてやるから金をもらいたい気分であった。
その印刷会社は社員数が80人にも満たなかったのに毎年10人近くが途中退職しており、主な取引先はほぼ官公庁相手で、毎年安定した受注があるという強みはあったのに、会社の業績は私が入社する前から右肩下がりを続けていた。
これらは昼食のまずさと無関係ではなかったはずだ。
朝礼では社長が「給料もらってるプロなんだから、仕事にはちゃんと責任を持て!」と、偉そうに小言を言っていたが、
その社長本人は皆とは違って毎日特製の仕出し弁当を食べていたんだからムカつく。
責任をこちらに押し付ける上司もいたし、給料も安かった(毎年ドラスティックに減らされていた)から気持ちよく働ける会社では全くなかったが、何よりあの弁当のまずさこそが社員のことをどう思っていたかをわかりやすく証明していたと今では思う。
人間が働いていい職場では決してなかった。
食い物の恨みは忘れられない。
こういう食べ物についての文句を言うと、
「食べ物を粗末にするな」
とか、
「世界には飢餓で苦しむ人もいるんだ」という人もいるだろう。
ごもっとも。
まずいことを理由に残した食べ物がゴミとして破棄されるのは、私も心苦しく、忍びない。
しかし同時にこう反論したくなるのだ。
「その貴重な食料を、食べたくない味に調理して提供した者の責任はどうなんだ」
と。
食べる方が好き嫌いなく食べなければいけないならば、作る方もある程度の水準、せめてヒトが食用可能な味にするべきなのではないか。
違うか?
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