私は自他共に認める雨男である。
外出するとよく雨が降ることを自覚しているし、「お前が来るといつも雨だ」と知人たちによく苦情を言われる。
私の写る旅行先での記念写真はたいてい今にも降ってきそうな曇り空が背景であることが多いし、
今まで参加する予定だった数々の野外イベントを雨天中止に追い込んできた筋金入りである。
雨男の心構え
雨男であることに胸を張る気はない。
むしろ迷惑をかけていることを自覚して心苦しく思う、たまに。
それに、いつも降らせるわけではないし、わざとやってるわけじゃない。
雨男にもかかわらず、私はスズキのバイクST250を所有してツーリングを趣味にしているが、気を引き締めて行けば降らないこともないわけではない。
ただこれまでバイク仲間と集団でツーリングに行ったことが三度あったが、三度とも浮かれすぎて気が緩んだらしく大雨になった。
それについては本当に申し訳なく思い、以来ツーリングは一人で行くことにしている。
向こうも誘ってくれなくなったし。
そんな私はかなり天気予報には敏感で、降水確率が20%以上の場合は絶対にツーリングに出かけない。
経験則から、20%程度だと私が外出したとたんにその降水確率は急上昇、天候が激変することが多いからだ。
気象予報士やアメダスも気圧配置や雨雲の動きだけではなく、私の行動や予定も観測した方が良い。
しかし自慢じゃないが、天気予報が降水確率0%と予想していても雨天にしたことだってあるのだ。
雨雲を呼ぶ男~雨男の自己迷惑力~
いつも雨にしないよう気を引き締めて外出するが、我ながら天気予報に0%と言い切られるとどうしても気が緩んでしまうようなのだ。
その日新潟市までの長距離ツーリングを予定していた私は、天気予報が新潟県や北関東の降水確率0%と予測したのを真に受けて、勇んで愛馬ST250にまたがり関越自動車道を北上した。
天気予報は大当たり。
埼玉や群馬は快晴、私は関越道を快調に飛ばし続けて関越トンネルに入った。
日本第二位の長さの関越トンネルの果てしなき暗黒を抜ければ魅惑の新天地新潟県!
だが、
トンネルを抜けるとそこは雨だった。
それも土砂降り。
降水確率0%という予報だったのでは?
そう心の中で自分に、特にそう予想した予報士に対して問いかけたが、雨は止む気配がないどころかますます激しくなり、こちらは猛スピードのため雨にさらされる上半身や太ももが痛い。
行動に計画性が欠けることが多い私は、雨男にもかかわらず合羽を準備してこなかったため瞬く間にずぶぬれになった。
おまけにこらえ性のない私はこれ以上の進撃を断念。
小出インターチェンジを降りてUターンして関東に逃げ帰る羽目となり、新潟ツーリング旅行を強制終了。
さっき通り過ぎたばかりの関越トンネルに早くも戻ってきた。
だが、関越トンネルを抜けた先でも私の災難は続く。
群馬県側も雨だったのだ。
群馬の降水確率も0%という予報だったのにこの土砂降りとは納得いかないが、それ以上におかしいと思ったことがある。
前方の視界は晴れで、今走行している道路も乾いているのに大雨なのだ。
空を見上げると私の前方は雲一つない晴天だが、頭上にはどす黒い雨雲が浮かんで後方に広がっている。
今しがたまで晴れていた所に、私が巨大雨雲を引き連れてきたみたいだ。
まさに「嵐を呼ぶ男」ならぬ「雨雲を呼ぶ男」、自分の雨男ぶりを最大限可視化させたとしか思えない壮大な超自然現象だった。
振り切ってやる。
私はそのまま休憩なしで走り続けて雨雲圏内から離脱することを決断したが、偉大な大自然の嫌がらせは徹底していた。
雨雲は私の走るスピードに合わせてぴったり着いてきて、頭上に雨を降らせ続けたのだ。
群馬・埼玉県全域で私は雨を浴び続け、雨から解放されたのは東京都に入ってからだった。
練間インターのあたりに来るとカンカン照りで雨が降った様子が全くなく、
私一人だけがずぶぬれでバカみたいであった。
予報が降水確率0%でも地域やそこにいる人によっては降ることもあると理解すべきらしい。
緊急提言!雨男・雨女の国際貢献
私のような雨男は、自分にも他人にも迷惑をかけるしか能がないのだろうか。
いや、否!むしろ逆である。
我々雨男雨女が一定数いるから、日本は水資源が豊富なのだ。
少なくとも日本列島の生態系には欠かすことができない存在である。
我々を撲滅したら日本は水不足に苦しむことになろう。
雨にされてイベントをつぶされたくらいでそんなに嫌な顔をするでない!
それに私はこの能力を生かせる場が他にもあると前から考えているのだ。
それは
干ばつに悩む地域や国へ我々強力雨男・雨女を送り込めば、雨を降らせて水不足解決の一助になるのではないかということだ。
世界に水資源に乏しい国や地域は多い。
そんな国にとって雨を招く我々は願ってもない貴重な存在のはずではないか。
ただしあんまり強力なのを大量に派遣すると降らせすぎて水害を招く恐れがある。
軍事利用にはもってこいだが、国際貢献には甚だ具合が悪い。
どの程度の奴を何人派遣するかなどの選定は慎重に行う必要がある。
それには全国の雨男雨女の存在を突き止めて聞き取り調査やモニタリングを行い、各々の雨を招くレベルや住所等データベースの作成が先決なのは言うまでもない。
またそのように全国の雨男雨女情報を把握すれば国内的にもメリットがある。
水害が予想される時期もしくは地域から海外の干ばつ救済を口実にして、彼ら彼女らを一時国外追放して各地を水害から守ることもできるのだ。
むろん、そのデータベースの取扱いについては要配慮個人情報に当たるはずなので、行政機関には厳重に管理していただきたい。
さもないと水害が起こった地域で村八分にされる恐れがある。
私がここで主張したいのは、雨男雨女は日本にくすぶって周りの人々に煙たがられながら、
水資源の確保に貢献していることにあぐらをかいていてはいけないということだ。
日本の雨男雨女は世界を目指すべきである!
世界が我々の助けを待っているのだ!
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