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1989年3月に発覚した、足立区綾瀬の女子高生コンクリ詰め殺人。
2022年の現代になっても語り継がれ、世界的にも知られている悪名高きこの事件は大きく報道され、1989年の日本に大きな衝撃を与えた。
殺された女子高生・古田順子さんは不良でもないし、犯人たちを怒らせるようなことは何もしていない。
上場企業の部長職を務める父と母、兄と弟の三人兄弟という健全な家庭で育っており、家族思いで母親の家事もよく手伝い、近所の人にも挨拶ができたため「よくできた娘さんだ」と評判だった。
学業成績や学校での素行にも問題はなく、身も心も華のある彼女は、友達も多かったという。
かといって傲慢な態度をとることは全くなく、誰からも愛されていたのだ。
そんな順子さんが、卒業後の進路として家電量販店への就職が決まり、残りわずかとなった高校生活を満喫していた頃に、宮野ら鬼畜たちの毒牙にかかり、若い命を絶たれてしまった。
理由はただひとつ。
彼女の容貌が、彼らにとっても魅力的だったからだ。
おまけに彼らは、欲しいものがあったらモノでも人でも、奪うことを無計画に繰り返す無法者たちでもあった。
両親や兄弟はもちろんのこと、同級生たちも彼女の死を悲しみ、葬式では、慟哭の嗚咽がこだましていた。
そして、葬式にはいなかったが、家族と同じくらい深い悲しみと喪失感に打ちひしがれ、怒りに身を震わせていた人物がいた。
順子さんの彼氏である。
彼氏が語る順子さんと過ごした日々
彼氏であることを自ら名乗り出て、某女性誌のインタビューに応じ、同誌記者にそのやるせない心情を語ったのは、川村(仮名)という建築作業員の23歳の青年であり、順子さんとは歳がやや離れている。
高校を中退しているが、犯人の宮野たちのように当然の権利のごとく道を踏み外すことなく、まじめに生きてきた勤労青年だ。
川村青年が語ったところによると、順子さんとの出会いは、事件が起こる前の年のクリスマス。
友人の一人が順子さんの親友と交際しており、その縁で初めて顔を合わせた。
「目が大きくて明るい子」
それが、川村青年の彼女に対する第一印象だったという。
それから二回ほど、その友達も含めた複数名で遊びに行ったりしてほどなく、本格的な交際が始まる。
川村青年のことを気に入ったらしい順子さんの方から、「今度は二人だけで会いましょう」と言ってきたからだ。
付き合うようになってすぐに迎えたバレンタインデーの日。
お菓子作りが好きだった順子さんは、手作りのチョコレートを贈ってくれた。
2月は彼女の誕生日でもあり、チョコレートをもらった川村青年は18金のネックレスを贈る。
それから、週に一回くらいデートをするようになったのだが、順子さんはいつも律儀にも、そのネックレスをつけてきた
また、彼女は普段から非常に気が利き、六歳も年下なのにこちらの気持ちを察してくれたらしい。
非の打ちどころのない子だったのだ。
夏になると、川村青年の運転する車でよく海へ一緒に遊びに行ったりして、1988年という年は、幸福に満たされて過ぎていく。
やがて秋になり冬が近づいてきたころには、「冬になったらスキーに行こう」などと話し合ったりもした。
秋も深まった11月23日は、川村青年の誕生日。
その日のデートでは、順子さんはセーターを持ってきてプレゼントしてくれた。
彼女の手編みの黒いセーターだった。
その日は、二人で食事をしてボーリングを楽しみ、順子さんを自宅まで送り届ける。
「またね!」
別れ際、笑顔で手を振る順子さん。
この時、川村青年はこれが順子さんを見た最後となるとは、つゆほども思わなかったに違いない。
だが、この最高の彼女はその二日後、青年の元から永遠に奪われることになる。
彼氏の悲憤
デートから四日後の27日。
順子さんの母親から、ただ事でない連絡を受ける。
娘が、学校の制服のまま失踪したというのだ。
自分の彼女が消えて、平然と構えていられる男などいない。
川村青年は心当たりのある所を血眼になって探し始めた。
休みの日はもちろん、仕事が終わってからも。
そのさなか、再び順子さんの母親から連絡が入り、順子さんが「家出しただけだからすぐに帰る」と、電話で伝えてきたことが知らされる。
これは当の母親はもちろん、川村青年も「これはおかしい」と感じた。
不自然すぎるし、何かあったのなら共通の知り合いに真っ先に連絡があるはずだと考えたからだ。
何かよくないことが起こっていることを、彼はこの時点で確信したという。
事実、この電話は監禁されている最中に犯人によって言わされたものだったことが、後の調べで判明している。
その後も、川村青年は独自で必死の捜索を続けたが、何の手がかりも得られない。
昨年順子さんと出会い、今年は一緒に楽しむはずだったクリスマスが過ぎ、年が明けて正月も過ぎ、バレンタインデーも過ぎ、彼女の18歳の誕生日も過ぎた。
そして3月30日。
その日は、川村青年にとって、それまでの人生で最も悲しく、最も怒りを覚えた日となる。
埋め立て地のコンクリート詰めのドラム缶の中から、順子さんがむごたらしい死体となって発見されたのだ。
その知らせを聞いた後、川村青年はフラフラと親友のアパートに転がり込み、悲嘆のあまり正気を失うまで酒を飲んだ。
4月1日、順子さんの通夜。
川村青年もひっそりと線香をあげに行ったが、翌日の葬式には姿を見せなかった。
その代わりに、彼女の死体が発見された埋め立て地に花を供えに行き、ひとりむせび泣いたという。
「もう順子ちゃんとは会えない」
4月の中頃、まだ悲しみと怒りの真っただ中だった川村青年は酒浸りの生活になっており、生前の順子さんに勧められて禁煙していたタバコをひっきりなしに吸いながら、涙声で記者に語った。
そして犯人たちについて話が及ぶと拳を握りしめ、当然ながら憤懣やるせない様子でこう言った。
「あいつらの顔は覚えた!出てきたら同じ目にあわせて殺してやりたい!!」
この取材までの間に、彼は被害者側の関係者として刑事から犯人たちの写真を見せられており、その顔を目に焼き付けていたのだ。
「あいつら人間じゃない!」
川村青年はそう吐き捨てながら怒りに震えていたという。
少年ならば何をやっても許されていた時代
そう、人間じゃない。
やったこともさることながら、逮捕されて刑事処分を受けた四人のうち三人が出所後に罪を犯しているから、本当にそのとおりだ。
宮野裕史は、振り込め詐欺の片棒をかついだ。
小倉譲は、出所後も反省するどころか周囲に犯行を自慢、そればかりか知人男性を監禁して暴行。
湊伸治に至っては殺人未遂まで犯した。
異様に軽い判決を下した裁判官の一人は彼らに、「事件を、各自の一生の宿題として考え続けてください」などと、迷言を吐いていたらしいが、そんな宿題をまじめにやるような奴らだと思うか?
90年代初頭、この事件を扱った書籍が何冊か世に出る。
そのうちの一冊の作者は、拘留中だった犯人本人たちにも面会して取材し、その著作で彼らの育った家庭環境などの面から、この事件を社会の問題として扱っていた。
それを読むと、まるで未成年だった犯人たちが、ゆがんだ家庭と社会環境の犠牲者であり、そのおかげでこの事件が“起こってしまった”かのような印象を受ける。
今から見れば、先のことだからわからなかったとしても、バカげた主張にしか思えない。
何歳だろうが、どんな環境で育とうが、救いようもなく悪い奴というのは世の中にはいるもので、まさしく彼らがそれに該当していることは、出所後に事件を起こしていることから、すでに証明されているではないか!
だが、事件が起きてからほどない、これらの本が出版された当時というものはまだ人間性善説が全盛で、社会の安全を守るために殺処分が必要なくらいのレベルの未成年の悪党が、世の中にいないことになっていたようだ。
現代ならば、未成年でも彼らのうち複数名が、無期懲役の判決を下されていたはずである。
あの時代から生き、凶悪犯罪を犯した者が少年だという理由で、甘い判決を下されるのを目の当たりにし、他人事ながら釈然としない思いをしてきた者から見て、犯罪に対してより厳しくなった点に限って言えば、今の日本は、あの時より良くなっているのかもしれない。
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