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2016年(平成28年)8月7日、東京都杉並区久我山の富士見ヶ丘商店街では、毎年恒例の『富士見ヶ丘七夕踊り流し』の第二日目を迎えていた。
この祭りは、毎年8月のこの時期に二日間にわたって行われ、富士見ヶ丘商店街の通りを南から北へ、北から南へと阿波踊りやソーラン節などの踊り子たちが踊り流すものである。
そこへ数年以上前からサンバが加わり、いつしかそれが目玉となった『富士見ヶ丘七夕踊り流し』は「サンバ祭り」の通称で呼ばれるようになっていた。
そしてこの日の夕方からは、その目玉であるサンバのパレードが行われる。
通りには数多くの家族連れなどの見物人が集まり、お目当ての太鼓や笛の音を響かせて練り歩くサンバ隊を見物していた。
夜7時半ころには祭りは最高潮を迎え、真夏の夜の開放的な空気も手伝ってか見物人たちの中にも行列の後ろをつけたり、陽気なリズムに合わせて手拍子したり踊り出したりするお調子者も出現するほど盛り上がる。
このように、富士見ヶ丘商店街を楽しい雰囲気に包んだサンバ隊と見物人の列がある三階建ての建物の近くに来た直後、その場を凍り付かせる事態が発生した。
頭上から火炎瓶
ガン!!
何かがビルから落ちてきたような音が響いたが、サンバの騒々しさもあって、気づいた人は最初あまりいなかった。
物体が落ちてきた近くにいた見物人のみが気づいており、その人物によると、それはビンとスプレー缶をくっつけたような代物だったという。
二発目の物体が落ちてきた時には、さすがに多くの人が気づいて「何だ何だ」と騒ぎが起こり始めたとたん、三発目が降って来た。
そして、今度は誰しもが気づくことになる。
その物体は地面に落ちて割れるや、高さ2メートルほどの大きな火炎を上げたのだ。
火炎瓶だ!
一部の人の足や髪の毛に火が付いて転げまわり、その場は一気に騒然となる。
もうサンバどころじゃない。
落ちてきた方向を見上げると、三階建ての建物の三階のベランダに上半身裸の初老の男。
手に瓶のようなものを持ち、遠目からもわかるような敵意に満ちた目つきで仁王立ちしている。
男はさらに四発目、五発目を見物人たちが逃げ散った道路へ向けて投げたために火炎が立て続けに上がった。
男はいつの間にか部屋の中に引っ込んだが、今度はそこからも火災が発生。
楽しいサンバ祭りは、悲鳴と怒号がこだまする修羅場と化した。
やがて、消防や警察が駆け付けて路上の炎や建物三階の火災は消し止められたが、火傷や瓶の破片の切り傷などで子供を含む15人もの男女が負傷。
とはいえ、誰も命に別状はない軽傷だったのは不幸中の幸いであったと言えよう。
一方、この騒動を起こした張本人の男は、火炎瓶を投げた建物の内部で首を吊った姿で発見され、病院に運ばれたが翌日死亡した。
サンバ嫌いの主張
その後の警察の捜査で死亡した犯人は、橋川秀雄(仮名)という68歳の男であることが判明。
さらに。橋川の住んでいた部屋からは、今回の事件で使われたガスボンベと瓶が合体した手作りの火炎瓶が複数個発見される。
どうやら、液体の炎でボンベまで破裂させて威力を倍増させることを狙っていたようだ。
また、火炎瓶の他にボウガンまで発見されている。
犯人の橋川は、かつて富士見ヶ丘商店街で酒屋を経営していたが店をたたんで久しく、前年には妻を亡くした独り身。
近所づきあいもあまりなく、孤独な生活を送っていた。
生きる目的を失った結果、心身のバランスを崩して犯罪を犯す高齢者にありがちなパターンである。
橋川がサンバ隊を攻撃した本当の動機は、本人が地獄に行ってしまったので分からないが、相当サンバが嫌いだったことは確かなようだ。
ごく限られた彼の知人によると「祭りがやかましい」と何年も前からこぼしており、それは特にサンバ指していたのは間違いないだろう。
生きる意味を失って孤独をこじらせるあまり、大嫌いな音楽を演奏したり踊ったりしている者だけじゃなく、楽しそうにしている者にも虫唾が走るようになっていたのも一因かもしれない。
全人類皆サンバが好きなわけではない。
耳障りな騒音としか感じない人もいるはずではないだろうか。
本ブログの筆者もそう思っている。
徳島県の阿波踊り歌の出だしには「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損々」なる言葉があるが、サンバに関してはどちらも救いようのない阿呆であるが、間違っても「踊る阿呆」の方になることはないという認識である。
近所で毎年サンバ祭りが開かれるようになったら引っ越しを検討するか、その日は外出して祭りが終わるまで帰宅しないだろう。
だからと言って、火炎瓶まで投げたのはやりすぎだ。
橋川の心情は理解できても、行動は支持できない。
子供まで怪我させたのだから、橋川は晩節を凶悪犯罪で大いに汚してしまったことになる。
橋川も三階からサンバ隊に向けて火炎瓶ではなく放尿くらいだったら、全国のサンバ嫌いの同情と喝采を浴びたであろう。
出典元―女子SPA!、ハフポスト、Yahoo!ニュース、
産経ニュース
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