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善良すぎて殺された青年 ~1999年・栃木リンチ殺人事件~ 第一話


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第一話 最も善良な青年と最も悪辣な犯人

この上なく善良だった青年

1980年5月6日、栃木県那須郡黒羽町で理容店を営む須藤光男・洋子の間に、待望の長男が誕生する。

その子は正しく和むと書いて「正和」と名付けられ、須藤家はこれで、3歳上の長女、祖父・祖母を合わせた6人家族となった。

幼い頃は軽い小児ぜんそくやアトピーを患ったこともあったが、実直な両親や祖父母の愛情を注がれて、正和は健全に育ってゆく。

生来の性格だったのだろうか、非常に温厚な性格であって、蚊ですら殺すこともしない優しい性格の持ち主で、ケンカもしたことはないし、思春期においても親に反抗したことが一度もなかった。

また、生まれ育ったのがのんびりとした田舎であり、通っていた小中学校は一学年の生徒数が都会の一クラスにも満たないという牧歌的な学校生活だったこともあって、人を疑うことを知らない純真な少年でもあった。

同級生たちにもねじ曲がった根性の者がおらず、学年全体が仲良しと言ってもよく、正和と仲の良い友達は非常に多かった。

正和はプラモデルなどを作ることが好きであり、高校に進学してからは自動車に興味を持ち始めたのをきっかけに、進路を決める学年になると日産自動車への就職を希望する。

高卒枠とはいえ、日産は安定の大企業であるために競争率は高かったが、正和は見事に内定を獲得。

高校時代にバトミントン部など三つの部をかけ持ちしたりして活動的だったことや、会って話せばすぐにわかる誠実な人柄が評価されたのだろう。

入社後は一か月の研修期間を経た後、エンジン部品を組み立てる鋳造課に配属になる。

肉体的にきつく、敬遠される不人気部署だったが、正和は自ら志願、欠勤は一度もなく、誰より勤務態度は真面目だった。

おまけに彼は非常に孝行息子であり、家業の手伝いも欠かさなかったし、多くの者が親に金を出してもらって通う自動車学校も全額自分でアルバイトして貯めた金で通い、普通免許を取得している。

また、車も自分で買おうと貯金もしていた。

周りの評価も、真面目、素直、正直、純朴であり、困っている人間を放っておかない優しい性根だったと、彼を知る者は口をそろえる。

だが、後に両親、特に母の洋子は「育て方を間違えた。この世の中を生きるには優しすぎた。もっとケンカっ早い人間に育てればよかった」と激しく悔やむことになった。

なぜなら、息子・正和は日産自動車へ就職したことと、その優しすぎるほどの性格ゆえに、19年という短い人生を絶たれてしまったからだ。

彼とは対極の悪魔そのものの者たちによって、しかもこれ以上ないくらい無残に…。

悪魔たち

萩原克彦

萩原克彦(19歳)は、根っからの悪党だった。

栃木県警に勤務する父親の次男ではあったが、子供のころから粗暴な性格で、地元の宇都宮市の中学校に入ってから当然のように問題行動を起こし、100万円以上を恐喝する事件まで起こす。

警察官の父親は土下座までして謝罪したが、母親は萩原が悪さしても「ウチの息子はそんなことしない」などと逆ギレすることが多く、きつい性格で自分勝手な人物であったようだ。

長男は真面目で大学に進学しているから、萩原の方は、どうやらこの母親の血を受け継いでしまったんだろう。

祖母の溺愛も受けており、荻原はたびたび金をせびっていた。

中学卒業後は定時制高校に進んだが退学、鳶の会社で働き始めても無断欠勤を繰り返すなど仕事は徹底的に不真面目。

その一方で、地元の暴走族に加入して傷害や恐喝などの悪さを働き、逮捕されて保護観察処分を受けたこともある。

そのくせ実は小心者で、立場の強い者やおっかない人間の前では大人しくしているが、弱いと見た相手には徹底的に強気になるという、わかりやすいくらい姑息な性格の持ち主であり、よく付き合っていた彼女にDVを行っていた。

また、その立場の強い者の威光を巧みに利用して、自身を大きく見せることに長けてもいたクズだ。

梅沢昭博

梅沢昭博(19歳)は、自分では何もできない小心者だ。

そのくせ、誰かにくっつくや悪さをエスカレートさせる典型的な付和雷同型のチンピラである。

両親が離婚し、シングルマザーとなった母親の苦労をしり目に、中学校時代は窃盗や万引きを行い、悪い連中とつるむようになって高校に入ってからは暴走族にも加入。

萩原とは中学校の同級生であったが、卒業後に付き合いはなかった。

高校卒業後はどういう手を使ったのか、大手の日産自動車に入社。

だが髪を染めて、勤務態度も不良。

入社後早々、交通事故を起こしてそのケガを理由に会社を休み、給付金を受け取ってブラブラしていた。

ちなみに日産で正和と出会い、ロッカーも隣同士だった。

これは正和にとって最悪の出会いとなるのだが、それはまだ先の話である。

村上博紀

村上博紀(19歳)は、会社員の父親とピアノ教師の母親と弟という家庭であり、暮らし向きは裕福。

ただ、欲しがるものは買ってもらえるなど甘やかされて育っていたのもあって、わがままな性格になっていたらしい。

中学では水泳部に所属して、名門高校に進学するも高校二年生の頃から悪い連中とつるみ始め、中学時代の同級生の梅沢と暴走族に加入、それが原因で高校を退学になっている。

萩原とは小学校、中学校の同級生で、事件の発生した年の4月に再会。

萩原の働いていた鳶の会社で一緒に働いたこともあったが、萩原同様、不真面目で長続きしなかった。

そんなクズ三人が再会してつるむようになったのは、1999年9月23日。

そこから、事件に向かって運命の歯車が回り出すことになる。

続く

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