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死刑確定囚・野比のび太 – 第一話・老いた父と東京拘置所への道


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老いた父

小菅駅のホームに、電車のブレーキ音が甲高く響き渡った。

71歳の野比のび助は重たげな足取りで電車を降り、冷え切った空気を身に受けながら歩を進める。

背中はかつてよりも丸くなり、白髪の頭がわずかに揺れる。

彼はふと足を止め、無意識に視線を遠くへ向けた。

目に飛び込んでくるのは、薄曇りの空を背景に、まるで無言の巨人のようにそびえ立つ東京拘置所の建物。

圧倒的な威圧感を放ち、重苦しい空気に包まれている。

これから向かう先は、その威容を誇る建物の中だ。

小菅駅に降り立つのは、もう何度目になるのか──のび助は、もはや数えることをやめていた。

どれほどの時が経っても、この場所への道のりに慣れることはない。

アスファルトを踏みしめるたび、靴底が乾いた音を立てる。

薄曇りの空から吹き付ける冷たい風が彼の体を揺さぶり、のび助は古びたコートの襟をきつく引き寄せた。

道行く人々が無言で彼を追い越していくたび、その存在はますます小さく、儚いものに思える。

それでも、のび助は自らが向かうべき場所を知っていた。

逃れられない運命が彼の背中を押し、無言のうちに、東京拘置所へと導いていたのだ。

どうして、こんなことになってしまったのか。

なぜ、自分がこんな場所にいるのか──その問いは何度も頭をよぎるが、答えはいつも空虚で、無力感だけが残る。

それでも、のび助は歩き続けた。

冷え切った手をコートのポケットに差し込むと、ホッカイロのぬくもりが指先に伝わったが、それは、ほんの一瞬の慰めに過ぎない。

「池田屋」と書かれた看板が目の前に現れた。

拘置所に向かう面会者たちが立ち寄ることで知られる、この差し入れ屋も、今では馴染みの場所だ。

店先には黒塗りのアルファードが停まり、いかつい男たちが無造作に買い物をしている。

その姿はどこか非日常を帯びていたが、のび助には、すっかり見慣れた光景となった。

彼は無言で店の奥へ進み、差し入れ用のポテトチップスを一袋手に取る。

店員に無表情で支払いを済ませると、袋を手に再び歩き出した。

東京拘置所の面会者専用の入口は、すぐそこだ。

灰色の巨塔が冷然とそびえ、放射状に広がる構造が、無言で周囲を威圧している。

12階建ての建物は、未決囚や一部の懲役囚、そして極刑の判決を受けた「確定者」たちが収容される場。

冷たいコンクリートの塊は、ここに集う人々の希望も絶望も吸い込み、どこかへ押し込んでしまうようだった。

のび助は、たった一人の息子に会うために、ここへ来ていた。

野比のび太──自らの血を分けた息子は、この場所に十年近く囚われている。

のび助は、その短い面会のためだけに定期的にこの地を訪れ、30分間という限られた時間のために、小菅まで足を運んでいるのだ。

そして今、のび太と外で会うことは二度と叶わないし、いつかこの面会すら終わる日が来るだろう。

なぜなら、のび太は「死刑確定者」、十年以上前に起こり世間を震撼させた練馬区母子殺人事件の犯人として収監されているからだ。

被害者は、当時33歳の剛田静香とその幼い子どもたち──4歳の長女・葉音と2歳の長男・優士。

彼らを惨殺した罪が、のび太の人生を闇へと引きずり込んでいた。

のび助は深く息を吐き、建物の無機質な威容を見上げた。

心に重くのしかかるその事実を抱えたまま、彼は拘置所の入り口へと歩を進めていった。

続く

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