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死刑確定囚・野比のび太 – 第四話・消えた奇跡といじめの葛藤

 


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消えた奇跡と止まった時間

小学校五年生の時に退院して家に戻るや、あの奇跡のような一年間は二度と戻ってこなかったが、それを忘れられないのび太は、パパやママによくドラえもんの話をしたものだ。

しかし、両親はまるで彼のことなど忘れてしまったかのような態度で受け流し、始めからいなかったとでも言うかのように、彼の語る言葉を受け入れてくれなかった。

学校に行けば、現実はますます厳しいものとなる。

勉強についていけなくなったのはもちろんのこと、クラスメートからのいじめも、ひどくなる一方。

昔から憧れていた同級生の源静香、幼稚園の頃から自分をしょっちゅういじめていたジャイアンこと剛田武と骨川スネ夫。

彼らとは、四年生の時にドラえもんを介して距離が縮まり、みんなでドラえもんと一緒に他の星やジャングル、魔界を冒険して修羅場をくぐった戦友たちともいえる存在だったが、静香はドラえもんが来る前のようにのび太にそっけなくなり、ジャイアンとスネ夫も相変わらずどころか、以前にも増してからかったり暴行を加えて来るようになってきた。

そして彼らも両親同様、ドラえもんの話をしても「知らない、覚えていない」とでも言うような冷たい態度だった。

小学校を卒業して中学校に上がると、いじめはさらに激化する。

中学校の入学生には母校の「すすきヶ原小学校」以外の小学校である「月見台第一小学校」出身の者たちがおり、彼らがその主な加害者となった。

彼らは「すすきヶ原小学校」の同級生より悪質で、自分のことを「見たこともないくらいいじめがいがある奴」だと思っていたらしい。

だが、新しい同級生たちからズボンとパンツを下ろされるという陰険で屈辱的な暴力を受けていた時、小学生時代に自分をいじめていたジャイアンが彼を助けてくれたことがある。

元々大きくて身体能力の高い体を野球部の厳しい練習で磨きをかけているジャイアンは、同級生に一目置かれていたため、力強く大きな声で怒鳴ると、彼らはすくみあがった。

「すすきヶ原のモンに手え出すんじゃねえ!」

ジャイアンは、たとえのび太のような者でも、自分の母校出身の者が他の学校出身の者にやられるのが我慢ならなかったのだ。

そして、野球部で上級生からしごきを受けて、やられる側の気持ちを味わっていたからであろう。

それ以降、自分の見ている前で、月見台第一小出身の者に、のび太をいじめさせなかった。

そういう時だけは救われた気がしたが、ジャイアンはいつもそばにいて守ってくれるわけではない。

彼の見ていないところでいじめは絶え間なく続き、のび太は中学校一年の三学期に登校拒否に陥った。

家に閉じこもるようになったのび太は、そのままニート生活に突入。

ドラえもんが再び帰ってこないかと、毎日机の引き出しをそっと開けては、何もない空間を見つめる日々を送るようになる。

あの青い体が突然現れて、「大丈夫だよ、のび太くん」と言ってくれるのをずっと待っていたのだ。

だが、何も起こらない現実が、いつも彼を締め付けた。

希望は消えることなく心に残っていても、現実には届かない。

のび太の心は中学一年生のまま止まり、気づけば歳月は容赦なく過ぎ去っていた。三十路を迎えてもそのままの彼は、やがて人生を狂わせた「あの日」を迎えることとなる──彼を拘置所に追いやった日を。

続く

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