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死刑確定囚・野比のび太 – 第十話・中学校での不登校の理由、拒絶と崩壊


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拒絶と崩壊

「のび太、いい加減に学校へ行きなさい!」

母親の玉子が大きな声でそう叱りつける朝が、何日続いただろうか。

のび太は、布団の中でうずくまりながら、耳を塞いでその声を聞かなかったことにしようとしていた。

中学校に進学する前までは、勉強が苦手でものんびり屋だったのび太は、母親の言葉を素直に聞いていた。

少なくとも、学校に行かないという選択肢は、頭の中になかった。

毎朝、起こされれば嫌々ながらも、ランドセルを背負って登校していたのだ。

しかし、月見台北中学校に入学してから、すべてが変わった。

きっかけは、些細な抵抗だった。

最初は「今日はちょっと具合が悪い」と布団から出てこない日がぽつぽつと増えた。

小学校時代から体が弱く見られていたのび太の言葉に、両親も最初は強く言えなかった。

「それじゃあ、今日は休んで明日からちゃんと行きなさい」

玉子は、そう言ってのび太を布団に戻すが、翌日も彼は行こうとはしない。

やがて「行きたくない」という理由を、直接口にするようになる。

玉子が制服を持ってきてもそれを受け取らず、父親ののび助が説得に加わっても、頑なに首を振った。

「学校は嫌なんだよ。行きたくないんだ」

彼の返答はいつもそうだったが、その言葉の裏には、もっと大きな理由が隠されていた。

ある日、玉子が布団を引き剥がし、強引に制服を着せようとしたとき、のび太は、いつになく激しい抵抗を見せた。

「やめてよ!行きたくないって言ってるだろ!」

彼の大きな声に驚いた玉子は一瞬手を止めたが、それでも引き下がらなかった。

「どうしてそんなことを言うの!学校には行かないとダメなのよ!」

しかし、のび太は泣きながら布団を掴み、身体を丸めて全力で拒否。

その様子を見た玉子は、それ以上強く言えなくなり、のび助もただ困った顔でその場を離れるしかなかった。

中学校でのいじめ――それがのび太をここまで追い詰めているのだと薄々察しつつも、両親にはどうすることもできなかったのだ。

11月の惨劇以降、のび太は、学校という場所そのものを恐れるようになっていたのである。

あの日、静香が自分を見たあの嫌悪感を含んだ目の表情が、脳裏に焼き付いて離れない。

どんなに眠ろうとしても、その表情が頭をよぎり、胸を締め付けた。

学校に行けば、また同じような目で見られる。

何かをされなくても、ただあの目で見られるだけで、自分が崩れ落ちてしまいそうだった。

登下校の時間帯は、家の外に出ることすらできない。

制服姿の同級生たちを見るだけで心臓が痛くなり、布団に逃げ込むのが精一杯だったのだ。

冬休みが始まると、学校に行かなくていいという安心感からか、のび太は少しだけ気を緩めた。

しかし、休みが終わる時期が近づくにつれ、彼の不安と恐怖は再び膨らみ始めた。

「行かなくちゃ……」

布団の中で何度も自分に言い聞かせるが、身体が動かない。

初日の朝、玉子に起こされても、「今日は無理だよ」と言い訳を繰り返す。

こうして、二学期の終わりから続いていた不登校は、三学期が始まっても改善することはなかった。

両親も最初こそ何とか説得しようとしていたが、次第にその熱意も薄れていく。

「また明日から行くって言ってるし」

「きっと、そのうち行くだろう」

そう自分たちに言い聞かせることで、両親も現実から目を背けていたのだ。

そんな中、のび太の心の支えは、またしても机の引き出しだった。

彼は、毎日それをそっと開けてみる。

小学校時代、引き出しの中にはタイムマシンがあり、そこからドラえもんが現れて助けてくれた。その記憶が、彼の唯一の希望だった。

「ドラえもん……戻ってきてよ。助けてよ……」

毎日祈るように引き出しを開けるが、そこにあるのは、相かわらず空っぽのスペースだけ。

それでも、彼は諦めなかった。

どこかで、これを知っているに違いない、ドラえもんが再び現れて、自分をこの地獄から救ってくれると信じていたのだ。

だが、何も変わらない日々が続き、のび太は次第に現実を受け入れ始めた。

それは、ドラえもんも、もう自分を見捨てたという現実だった。

中学校卒業の年、のび太は、とうとう学校に通うことなく時を過ごした。

一年も通わなかった中学校生活は、何も成果を得られることなく終わる。

「卒業」――その言葉を聞いたとき、のび太の胸には安堵と共に、深い虚しさが広がった。次に進むべき場所が何も見えず、自分の未来に何の展望も持てない。

そして、彼はそのまま部屋に閉じこもり続ける。

次第に両親も無理に外へ出そうとすることをやめ、のび太の生活は、布団の中と机の引き出しを行き来するだけの日々へと変わっていったのだった。

続く

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