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死刑確定囚・野比のび太 – 第十一話・剛田商店の成功と静香の帰国


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賑やかな夜と静香の噂

27歳の剛田武は、成功を手にした青年実業家として、華やかな日々を送っていた。

これまでの努力と眠っていたビジネスセンスが実を結び、彼の経営する「剛田商店」は、イーコマース事業の大成功で全国的に知られる企業へと成長。

フォワーダー事業を通じて海外との取引も拡大し、業績は右肩上がり。

仕事は忙しいが、結果が伴う充実感に満ちていた。

仕事が終わると、武はよく銀座や新宿の夜の街に繰り出した。

パートナーでもある骨川スネ夫が「今日も一杯やりに行こうよ!」と誘ってくるのだ。

スネ夫は、大学時代から経営者としての才能を発揮し、今では父親からグループ企業の半分の経営を任されつつある実力者である。

お互いにビジネスの相談をし合える信頼関係を築きながら、時には豪快に酒を飲む友人同士でもあった。

銀座のクラブ、新宿のガールズバー――どこに行っても武の周りには女性が集まってきた。

「剛田さん、何をされている方ですか?」

「ううん、まあ、物流と商社関係の仕事を少々」

そう言って笑顔を見せる武のたくましい体格と自信に満ちた態度は、女性たちを大いに惹きつけた。

女性たちの視線が自分に集まるのは嫌いではない。

むしろ、その注目を楽しんでいた。

「ジャイアン、また別の子と飲みに行ったの?」

スネ夫が苦笑しながら尋ねると、武は肩をすくめて答える。

「いいじゃねえか。俺みたいな男が、女にモテない方がおかしいだろ?」

その言葉には冗談めいた軽さがあったが、実際に武はモテていた。

クラブやバーでの出会いだけでなく、仕事関係のパーティーでも女性から誘われることが実に多い。

筋肉質でたくましい体に仕立てたスーツが似合い、豪快で面倒見の良い性格が、彼をより魅力的に見せていたのだ。

恋愛に真剣になる気は特にない。

武は「遊び」を楽しむことに全力を注いでいた。

次から次へと新しい女性と出会い、その場限りの関係を続ける日々。

銀座、新宿、六本木……彼の夜の生活は派手だった。

そんな中、ある夜の銀座でのこと。

クラブのVIPルームでスネ夫と酒を酌み交わしていると、スネ夫が、ふと昔の話を持ち出した。

「そういえば、静香ちゃんのこと、聞いた?」

スネ夫の口から飛び出した名前に、武は一瞬手を止めた。

「静香?…ああ、源静香ちゃんのことか?何かあったのか?」

「アメリカに留学してたじゃん。確か現地で就職もしてたはずだよな。でも、最近日本に帰ってきたらしい。どうやら婚約者と別れたとかで、かなり傷心らしいよ」

その話を聞いて、武の胸には微かな違和感が広がった。

「婚約者と別れた?どうしてだ?」

「詳しいことはわからないけど、なんか、かなり揉めたらしいよ。向こうでの生活も上手くいかなくなったとかで、結局、実家に戻ったみたい」

武は、静香のことを思い出した。

幼い頃からの馴染で、小学校、中学校とずっと一緒だった子だ。

静香は賢くて優しくて、何より美しかった。

中学校時代、テニス部で彼女が自分に見せた笑顔は、武の中に深く刻まれている。

だが、小学生時代や中学生時代の甘酸っぱい記憶を抱きながらも、まだ剛田商店の経営を引き継いで奮闘していた頃に、彼女がアメリカで新しい人生を歩んでいると誰かに聞かされても、静香のことを昔の、遠い存在になっただけだと感じて、そのままになっていた。

「で、どうするんだよ、ジャイアン」

スネ夫がニヤリと笑って、武をからかうように言った。

「静香ちゃんに会いに行くのか?それとも、今の女遊びを続けるのか?」

「別に俺が会いに行く理由なんてねえよ」

武はそう答えたが、心の中では、何かがざわついていた。

静香が婚約を破棄し、日本に帰ってきたという話が、彼の中に眠っていた記憶を呼び覚まそうとしていたのだ。

その夜、家に帰った武は、久しぶりに昔の中学の卒業アルバムを開いた。

中学生時代の写真が、次々と目に飛び込んでくる。

その中には、静香が笑顔で映っている写真もあった。

「本当に帰ってきたんだな……」

彼は、その一枚をじっと見つめながら、胸の奥で何かが変わるのを感じた。

静香が傷ついて帰国したという事実が、武にとって遊びの延長ではない何かを、意識させたのかもしれない。

続く

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