ついこないだまで暑くてかなわなかったと思ったらもう11月、季節はもう晩秋。
実りの季節、食欲の秋である。
食欲の秋の味覚と言ったら、私は柿を真っ先に思い浮かべる。
故郷の実家で暮らしていた頃は、柿に不自由したことがなかった。
近所の蒲山さんという半兼業農家の庭に大きな柿の木が何本もあり、我が家は毎年柿をお裾分けしてもらっていたからだ。
その柿の木のうちの二本は蒲山邸の塀近くに生えており、枝が塀を越えて道路側までせり出しているため、たわわに実った柿に手を伸ばせばすぐに届く。
中学2年生の頃からシーズンにその下を通り過ぎると、いつも半自動的に私のズボンのポケットには柿が入っていた。
勝手に失敬していたからだ。
黙っていてもお裾分けしてくれるのにこんな悪事を働いていたのは、柿の熟度への私独自のこだわりからである。
柿が一番おいしいのは完熟になる直前より前、ほんのり甘く果肉が固いくらいの熟度のものであると、このころから確信していた。
それより前や後はダメだ。
人間の年代で換算すれば、高校2年生から大学1年生くらいまでが好ましい。
つまり十代後半。
私はそれぐらいが、柿の食べごろだと今でも思っている。
あのまだ固く、出し惜しみ恥じらうような甘さこそがたまらないのだ。
だからそれを過ぎた柔らかい柿は無理だし、ましてや干し柿なんて論外!
成熟した色気や美魔女なんて認めない。
あくまで柿の話だからね、柿。
ところがくだんの蒲山さんがお裾分けしてくれる柿は、私的適齢期を大きく越えているものばかりなのだ。
人間の年齢だと25歳以上くらいが平均で、三十路を超えた年増まで混じっている。
祖母や両親には好評だったが、思春期の私の食指は動かない。
とんでもないことをしていたと今では反省しているが、その時は「食べごろをくれない方が悪い」とばかりにシレーっと柿泥棒を働いていた。
蒲山家の柿をいただく時は、一撃必殺がマストだ。
何食わぬ顔で柿の木まで近づく間までに標的を定め、柿がたわわに実って下までしなった枝の下まで来た瞬間に手を伸ばし、両手を使って瞬時にもぐ。
気分はまるで、大戦中B29を迎撃しに向かった戦闘機「飛燕」のパイロットそのもの。
もぐのに失敗した場合はそのまま通り過ぎ、深追いはしない一撃離脱戦法を取っていた。
むろん、前後に誰かの目が光っていないか確認するのは言うまでもない。
あの時の感覚は今でも覚えており、実家に帰省して蒲山さん宅近くに行くと、いつもあの興奮が罪悪感と共によみがえる。
このように戦利品が得られたら、家に帰る前に全部食べてしまう。
証拠を隠滅し、完全犯罪を果たすためだ。
私は柿を切って食べない、どころか皮も剥かない。
そのままワイルドに皮ごと丸かじりである(さすがにヘタやタネは食べないが)。
これは多分に、我が家の習慣によるものだ。
子どもの頃から、祖母が柿をおやつに出してくれた時は、いつもそのまま出てきた。
他の果物、リンゴや梨などは律義に皮を剥いて切って出してくれるのに、柿だけは、なぜかそのままなのだ。
祖母によると、昔からこうしてたとのこと。
祖母の息子である私の父も何の疑問も持たず、そのまま柿をかじっていたし、母もそれになじんでいた、
人様のお宅で柿をごちそうになった時、リンゴや梨と同じく皮を剥いて切られて出てくると「何もそこまでしてくれなくてもいいのに」と思うくらい、私の中では常識である。
皮あっての柿なのだ、皮なしの柿など柿ではない。
私にとっての皮なしの柿は、女子高生フェチの男性にとって制服を着ていない女子高生と同…。
かなり不快な喩えをして申し訳ないが、私にとって皮のない柿がどんなものか、わかる人には十分わかっていただけたものと信ずる。
こうして私は中学校を卒業するまでバレることなく、二年連続秋になると違法な柿狩りをしていたが、それを知らないであろう蒲山さんは、毎年柿をお裾分けし続けてくれた。
高校生になってから、何てことしたんだろうと思うようになって現在に至る。
高校を卒業して大学生になった頃、蒲山家の柿の木は家の増築により残らず伐採されたため、柿のお裾分けはなくなった。
私は上京して故郷を離れたが、帰省した際には時々、お土産を蒲山家に持って行く。
罪滅ぼしのつもりなんだが、まだ中学生の頃柿を盗んでいたことは告白していない。
蒲山さん夫妻も80代のお年寄りだ。
今年こそ謝罪しよう。
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