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「ホントのこと言っただけじゃねーか!」
ムカつくことや気にしていることを言われて腹が立ち、言った相手に怒ったら、そう言い返されたことはないだろうか?
逆もあるだろう。
こちらが思っていることを、親切心或いは何気なく言ったら、相手がそうやってキレてきたことが。
もう、お分かりだろう。
「本当のこと」こそ禁句であって、一番言ってはならないことなのだ。
人間は本当のことを言われるのが一番嫌なのである。
相手が完全に間違っていて修正すべき「本当のこと」なら指摘するのは必要かもしれないが、本当のことだから言ってもいいのだと、言わなくてもいい「本当のこと」をずけずけと胸を張って指摘してはいけない。
例えば久しぶりに会った友達の頭部を見て「お前の頭、薄くなってるぞ」とか、幼い子の可愛らしさの自慢をする親に「お宅のお嬢さん、何回も見たいほど可愛くないですよ」とか、本当のことだとしても、言うべきじゃあないだろう?
かく言う私も、そういう悪意ある「本当のこと」を言われてカチンときたことが何回もあるし、逆に言ってしまって、怒られたことも多々ある。
そんな中で、絶交に至ってしまった一件もあるのだが、この件に関して私が悪いのか相手が悪いのか、どちらにもとれると自分では思うので、本稿ではそれを取り上げようと思う。
土屋恵一のコンパ
大学時代にバイトで知り合った他の学校の知人に土屋恵一という男がいたが、「本当のこと」を本当ではない場合にもよく言っていた。
あんまりパッとしない容貌な上にそんな性格だからか、彼は女に非常にモテない男で彼女はおらず、しょっちゅう合コンに参加したりしていたが、いつもうまくいかなかったようだ。
だが、彼はめげずにファッションには常に気を配り、合コンに参加し続けるだけではなく、自ら開いたりもしていたから己を知らな…いや、努力家である。
そして彼はその自ら主宰する合コンには必ず私を誘ってくれていた。
女日照りの彼が、相手側の女の子たちをどういうネットワークで見つけてくるのか分からなかったが、モテない彼に呼ばれて来るくらいだから、そのレベルも推して知るべしである。
要するにブ…いや、地味な子が多かった。
だが問題なのは、こちらの男性陣である。
面と向かって「本当のこと」は言いたくないが、20年くらい昔のことだし、文章だからぶっちゃけ言わせてもらう。
土屋と私以外に呼ばれた男たちが、毎回想像を絶するメンツだったのだ。
- 対人恐怖症クラスにモジモジしてうつむきっぱなしの超陰キャ青年
- 我々と歳は変わらんくらいだが、頭髪が四十路男性レベルに後退した気の毒な大学生はまだましな方
- 体重200キロくらいありそうな超肥満児
- 近い先祖に、地球外生命体がいるのでは?と思える容貌の宇宙人男
- 明らかに、一週間近く同じ格好でホームレス一歩手前の悪臭を放つ無精男
- 小学生かと見まごうばかりの身長で、ポンキッキの赤い方のような顔した小男
などなど、どこで見つけてきたのか逆に感心するくらいの怪物ぞろいだったのだ。
女性陣はあまり容貌がパッとしない程度で、一応女としてカウントできたが、男性陣は、見世物小屋たるフリークショーの陣容を呈しており、
男三人とか四人とか整数の人数としてカウント不可の小数点第二位か、下手すりゃ負の数あるいは虚数ですらあった。
ヒトは見かけじゃないって言うが、限度ってもんがあるだろう。
相手の女の子たちが、ドン引きして口数が少なくなったのは言うまでもなく、コンパというよりも、たから見たら何かをしでかした後の気まずい反省会か通夜の席だった。
もちろん、土屋自身も含めてカップルが誕生する気配もなく、一回参加した女の子は、次から来なかった。
土屋のゲスイたくらみ
そんな女の子側にとって、ハメられたとしか思えないコンパを盛り上げようとしていたのは、主催者たる土屋である。
だが、それがいけない。
なぜなら、土屋はトークが下手くそだったからだ。
しかも、延々しゃべるしゃべる。
口ベタによる延々続くマシンガントークほど、聞かされる側にとってイラつくものはなく、しかも真っ先に話す内容が、男性陣の出席者いじりである。
確かに、ツッコミどころ満載の見かけをしている者ばかりだったが、自分が連れてきといて、そりゃないだろう。
おまけに、ウケを狙っているつもりのようだが、口ベタなぶん容赦なさすぎるように聞こえて笑えない。
出席者の一人である若ハゲ大学生は、頭部を気にして帽子をかぶったままだったのだが、その理由を女の子の前でバラされて「もう二度と行かないからな!」とご立腹だったし、
体重200キロ男は、「ボクサーみたくバキバキの体型になるより、こんだけブヨブヨになる方が難しいぞ」と同じくコケにされてブチ切れ、土屋の胸倉をつかんで一同を凍り付かせていた。
そんな時土屋は、「ホントのこと言っただけだろ?」と悪びれもせず言い訳するのだった。
それともう一つ。
どうも土屋に対して、鼻もちがならないことがあって、それは奴自身が露骨にイケメンぶるところである。
なんかしぐさとかしゃべり方とか、私としゃべっている時と明らかに違う。
ホスト気取りっていうか、ええかっこしいで、勘違いしていること甚だしい。
容貌が眉なしの田吾作ヅラなぶん、余計に目立つ。
奴が一度トイレに立った時、女の子同士が「カッコつけすぎなんだよアイツ」とボソボソ話し合っていたのが聞こえたこともあったから、女目線でもそうであることが裏付けられた。
私も女の子も、それはさすが「本当のこと」でも、奴と違って面と向かって言えなかったが。
男の出席者をキワモノぞろいにしてるのも、自分を際立たせるためなんじゃないのか?
あいつ自身、大したことないないのに…。
私がようやくそう思うようになったのは奴主催のコンパに呼ばれて四回目くらいの時だった。
また、もう一つ肝心なことにその時ようやく気付いた。
それは、
「私自身も土屋を引き立たせるための怪物要員なのではないか」
ということだ。
そして私はその席で、ある「本当のこと」を言ってナルシストの土屋を成敗してしまったことにより、彼主催の合コンに呼ばれることはなくなるのである。
つづく
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