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2020年 おもしろ 悲劇 趣味

屈辱的な服装は全裸に勝る

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見ていると思わずプッとしてしまう言葉やイラストがプリントされたTシャツがある。

ツボを付いた一言や、ブランドのパロディ、遊び心満載のデザインが売りのいわゆる『おもしろTシャツ』だ。

これらのTシャツはそれを着ているだけで、笑いを取れたり個性を主張したりできる。

だが、中にはそれを着ているだけで痛い奴だと思われ、好奇の視線にさらされてしまうTシャツがある。

ただし、アニメのキャラが描かれたようなのは俗に言うその名もずばり『痛Tシャツ』であり、

ある意味確信犯的で、着用する者はある程度の気概と覚悟を持って着ていると信ずる。

私が問題にしたいのは上記『痛Tシャツ』ではなく、本当に痛いTシャツである。

わざとではないのかもしれないが、そういったTシャツは着用してしまった者を結果的に好奇の視線にさらし、公衆の嘲笑を誘うという未必の悪意が込められているとしか思えない。

だが、私は『I LOVE NY』を超越する痛さのTシャツを着て街を歩いてしまったことがある。

それも、何度もだ。

そのTシャツはおそらく他人から譲られたものだったと記憶するが、今から思えば、黒地に何やら白い英字が胸の部分にプリントされていたのを一切確認せずに着用し続けていた私も悪い。

ある休日、そのTシャツを着て新宿に行って散々歩き回った後で駅のトイレで手を洗っている時だった。

鏡に映る自分の姿が目に入って、Tシャツに何が書かれているか初めて気づいたのだ。

SEXY BOY
SEXY BOYだぞ、セクシーボーイ!!

地味に、そしてそこはかとなく痛々しくないか!?

たったアルファベット七文字なのになぜ気づかなかったんだろう!!

そういえば、これを着用して街に出た時、

すれ違った通行人に笑われたような気がしたことがしばしばあった。

そりゃ笑うだろう、私はその時すでに30代後半だったのだ。

メタボが進行した中年男がセクシーボーイと書かれたTシャツを着て繁華街を歩く姿は、

さぞかし滑稽かつシュールなスペクタクルであったことだろう。

何度もこれを着て繁華街を歩いていたから、無数の人間に笑われていたに違いない。

自分の不注意ぶりとアホさ加減にも腹が立ったが、このTシャツをデザインして販売した奴のセンスの悪さはテロ行為に等しいと思う。

電車に飛び込もうかと思い詰めるくらいの屈辱だったが、はやまったマネは思いとどまり、私は全速力で帰宅する道を選んだ。

電車を待ってる時も乗った後も、ブラジャーを取られた女性のように胸の部分で不自然な腕組みをして、ずっと前かがみ気味になっていた。

上京してからもう二十年近くたつが、あれほど新宿から自宅までの距離を長く感じたことはない。

私は帰宅後、セクシーボーイTシャツをすぐさま破棄したが、今まで不特定多数に嘲笑されていたであろうことを思うと、

ショックのあまりしばらく立ち直ることができなかった

今から思えばあのセクシーボーイTシャツは、始めから純粋にウケを狙った『おもしろTシャツ』の一種だったのかもしれない。

だが通行人たちは面白かったかもしれないが、私自身は断固面白くなかった

『おもしろTシャツ』を着る意義とは、他人も自分も面白くあってこそではなかろうか。

「Tシャツ選びは慎重に」という鉄の教訓を生涯心に刻んだ私の醜態を、他山の岩としていただければ幸いである。

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