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中二病なる言葉がある。
なんでも、「思春期に特徴的な空想や価値観、過剰な自意識やそれに基づく言動を揶揄する俗語」であるらしい。
それが大体中学校の二年生くらいで発症することが多いから、こう呼ばれているようだ。
そういえば私が中学生の頃も、グレ出す奴は、大体二年生からだった気がする。
反抗期もこれくらいの時期から本格化するみたいだし。
また、この年代はかなり多感な時期らしいから、自我が目覚めて荒れ狂うあまり、かなり恥ずかしい言動をしてしまいがちなようだ。
そして、身内以外の他者の影響も受けやすい。
私もそういえばその時期、その中二病に近い症状を患った記憶がある。
ただし、私は問題行動を起こさなかったし、校則はきっちり守る真面目な生徒だった。
先生や親に怒られるのが怖かったし、第一そんなことしたら他の生徒にシメられるのは当時からわかりきっていたからな。
私の場合はそういった人様の鼻につく症状ではなく、主に精神面及び思想面で発症したのだ。
もっとも、その影響は言動にきっちり表れていたから、中二病マンマであったが。
私の発症した中二病とは何か?
それは、異星人の地球侵略を本気で心配していたことだ。
思春期にありがちな異性への関心や将来への不安そっちのけで、私の中学校生活の後半は、異星人の侵略におびえる毎日だった。
きっかけは、金曜ロードショーで放映されたアメリカの異星人侵略モノのテレビドラマ『V』を見たこと、そして愛読していた漫画『ドラゴンボール』に戦闘民族サイヤ人が登場してきたことだったと思う。
元々心霊やUFOなど超常現象に興味があり、薄々異星人への脅威は感じていた。
だがその脅威は、それらの作品との出会いが思春期に達した当時の私の精神状態と不適切に相互作用して、多感な頭の中で爆発的に増大したのだ。
とどめは、日本テレビで放送された『矢追純一UFO現地取材シリーズ』。
まだ1980年代後半で、当時騒がれていたノストラダムスの大予言「1999年の7の月、人類は滅ぶ」とは、異星人の侵略だろうと確信した。
私はその圧倒的な脅威におびえるあまり、熱心に家庭や学校でその危険性を説き、身近な人々をまず啓蒙しようと努めた。
だが、無理解な両親は「もうすぐ受験だろ」と突き放し、学校ではいつもつるんでいた友達に距離を置かれ、「面白い奴がいる」と私を迫害する同級生が増加しただけだった。
誰も理解を示してくれなかったが、私は三年生になると心機一転して、自分ひとりだけでも異星人に立ち向かおうと決意、独自に戦闘訓練を開始した。
まず、攻めてくる異星人は『矢追純一UFO現地取材シリーズ』で主に取り上げられているリトル・グレイという種族だと断定。
そのリトル・グレイと戦うためにまずは格闘術の訓練として、二歳年下で中学校一年生の弟を異星人に見立て、組手の相手とした。
なぜ中学一年生の弟だったかというと、そのリトル・グレイという種族は身長140センチくらいで、当時の弟の身長とほぼ同じであり、まさに練習相手としてうってつけと考えたからだ。
私は「異星人の侵略に対する抵抗のため」という大義を弟に説き、練習相手となるよう命じたが、当時から兄である私を小バカにしていた弟は断固拒否。
それを自分さえよければいいという勝手な考えとみなした私が、組手訓練を強行すると弟は激しく抵抗し、二階の子供部屋で大乱闘に発展した。
弟も本気になってくれたので有意義な訓練になったが、一階で仕事をしていた父親が上がってきて「うるさい」と怒鳴られ、「お前が悪い」と私だけがシメられた。
こうして格闘術の訓練はできなくなったが、やはり異星人との戦いのキモとなるのは対空戦闘であろう。
異星人と言えば円盤、きっと主に円盤に乗って攻撃してくるはずだ。
そこで私は、対空戦闘の訓練に専心することにした。
本物の銃は将来的に狩猟免許を取得してから購入するとして、私はまず、保有していたエアーガンでの射撃訓練を開始する。
標的は、家の畑に飛んでくる蝶。
円盤のように不規則な動きをするため、ふさわしい標的だろう。
私は来るべき地球防衛の戦闘に備え、自宅の前の畑にやって来た蝶を片っ端から銃撃した。
しかし、蝶を狙ったBB弾は時々近所の家に飛び込んで、そこの住民に命中。
「お宅の長男に狙撃されてる」と、その住民から苦情を受けた両親にまたしてもシメられ、エアーガンを取り上げられてしまった。
自宅での自主戦闘訓練を封じられた私だが、やはり独自にやるのではなく、ある程度専門的な機関に所属する必要を感じるようになった。
すなわち自衛隊だ。
ちょうど中学三年生で将来の進路をある程度目星をつけるべき時期に差し掛かっていた私は、とりあえず中学卒業後は一旦普通科高校に行くこととして、高校卒業後には自衛隊に入隊することを学校での三者面談で宣言。
志望動機を聞かれたが、理由はもちろん「異星人と戦うため」だ。
「自分の将来なんだから真面目に考えろ」と両親も担任教師も激怒したが、
人類防衛の大義に燃える私の信念はいささかも揺るがなかった。
将来自衛隊に入隊することを決めていた私だったが、一方で今のままの自衛隊では、異星人にまともに立ち向かえないとも感じていた。
円盤を真っ先に迎撃するのは戦闘機だが、その自衛隊の戦闘機F-15Jは、やすやすマッハ10を超す速度で飛ぶ円盤の敵ではない。
海上自衛隊や陸上自衛隊はモノの役には立たないであろう。
ムダ死には御免だ。
だいたい憲法で縛られた自衛隊では、ソ連軍(当時はまだ健在)や中国軍相手でも持たない。
そこで私は他力本願とはいえ、地球上で最強最大の軍事力を誇る米軍に思いをはせるようになった。
だいたい、映画でも異星人の侵略など地球規模の未曽有の脅威に真っ先に立ち向かうのは米軍と相場が決まっている。また、現実にも、そうなるであろう。
矢追純一のUFO特番でもやっていたが、米国は異星人と密約を結ぶ一方で、万が一の対決に備えて円盤を宇宙空間で迎撃するための『スターウォーズ計画』を策定するなど、日本政府が及びもつかないようなことをやってのける国なのだ。
米国なら、何か考えてくれているに違いない。
そしてその頃、ずっとベールに包まれていた米国の最新兵器がプレスリリースされた。
ステルス戦闘機F-117ナイトホークである。
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それは後に、実は攻撃機であったことがわかるのだが、私はその従来の軍用機とは一線を画するF-117の未来的な形状を一目見て、対異星人戦用の兵器だと確信した。
これの主武器はきっとレーザーガンで、宇宙空間だって飛べるはず。
速度マッハ5くらい出してもおかしくはなさそうだし、最低でも空中静止は堅いと。
だが私の期待むなしく、F-117はレーザーガンどころか爆弾しか積んでおらず、宇宙空間は飛べないし空中静止もムリ、速度だってマッハ1すら出せやしない。
円盤との空中戦どころか、既存の戦闘機とドッグファイトしたら返り討ちに遭ってしまうことが分かった。
取り柄はレーダーに映らないことで、それは爆撃される側にとって相当ヤバいことなのだが、その時には、そんなことに思いもよらず大いに失望した。
画期的な兵器であることは私が高校一年生の時に起こった湾岸戦争で証明されたが、迎撃を受けることなく爆弾を落とすだけでは、異星人の相手になりそうもない。
人類は終わりだ、と絶望した。
そんな私だったが歳を重ねていくうちに、私の中で中二病たる異星人への恐怖は徐々に消え、地球防衛の大義のために自衛隊へ入隊するという情熱もどこかへ失せていった。
同時に、あの時の自分は何と無意味で恥ずかしいことに時間と労力を費やしてしていたのか、という常識的な反省ができるようには一応なれた。
だが成人して、久しい現在でもその後遺症は残っているようである。
画期的な新兵器が開発されて出現するたびに、それは地球上の軍隊や武装勢力ではなく、異星人相手にどこまで通用するかということを、この年齢になってもついつい考えるからだ。
軍事技術に限っては、私の目線は地球上だけではなく、地球外にも向いてしまっている。
私の中二病は、まだ完治していないということだ。
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