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2021年 おもしろ 悲劇 本当のこと

ウソつきの懺悔

結構嘘つきであることを告白する。だがそんな嘘つきな私でも、ついていい嘘と悪い嘘を分けているつもりだったが、先日ついた嘘はこのご時世あまりにも不適切であった。

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結構ウソつきであることを正直に告白する。

別にボケているわけじゃない。

自分でも普通の人に比べてよくウソをつくし、ウソに対する罪悪感もワリと低い方だと思う。

そんな私でもついていいウソと悪いウソがあるのはわかっているつもりだ。

私がつくのはヒトを楽しませるウソや無害なウソであり、他人をハメたり、迷惑をかけるようなウソでは決してない。と思う。

かようにウソつきの仁義を重んじる私だが、先月ついたウソは我ながら不謹慎すぎて有害だったと反省している。

この2021年のご時世で、絶対についてはいけないウソをついてしまったのだ。

2021年2月某日午後11時30分頃

その日、私は自宅で酒を飲みながらアマゾンプライムビデオを観ていた。

観ていたのはドニー・イェン主演の『イップ・マン 完結』。

期待通りの面白さで酒も進み、私は至福の時を過ごしていた。

そんな極上のプライベートを楽しんでいる最中にラインメッセージが入ったのは、物語も佳境に入り、酔いも手伝ってドニー・イェンのアクションシーンの真似をし始めていた頃だった。

別にラインやフェイスブックからのメッセージ自体がお邪魔虫とは思わない。
しかし、相手が問題だった。

誰なのか分かったとたん、楽しい気分に暗雲が立ち込めてきたのだ。

送ってきたのはY田という男。

私とほぼ同世代だが、仕事では大いに世話になっている人物であり、プライベートでも時折飲む仲である。

だがこのY田、仕事では頼りになるが、さほどプライベートでは楽しい人物ではない、酒の席でもシラフでも。
むしろ面白くない、というか少々ムカつく時がある。

どう面白くないかというと、まず人の話を聞かないところである。

例えば私自身が興味のあることや最近経験したことなどでもいいが、話を振ったとしよう。

全く聞いていないのである。

露骨に興味がなさそうなそぶりをするし、返ってくる返事は

「いや興味がない」「そういったことはよく知らない」

などでたちまち私の振った話は終了する。

これは私の気のせいではないと確信している。
彼ほど私の話をさせてくれない人間は、現在交際している範囲では見当たらない。

そのくせ、自分の話はよくする。

それも、

「自分の職場の後輩のN嶋K太が恩知らずだ」
「上司のS村S治に目の敵にされている」
「取引先の担当者のS司H樹の態度が無礼だ」

とかの恨み言が大半で、実名を挙げて具体的な状況まで詳細に説明してくる。

私はN嶋K太にもS村S治にも会ったことはないわけで、そんなこと知ったこっちゃない。

私はそんな話でも「そんなN嶋みたいな奴はいかんですなあ」とか、「S村みたいなのウチにもいますよ」とか、一応反応してやっている。

共通の話題ばかりが絶対続くわけはなく、お互い知ったこっちゃない興味のない話が出たとしてもある程度反応するのが会話の礼儀だろう。

私はその礼儀は守っている方であるはずだ。

いつも飲みに誘うのはだいたいがY田の方で、「報告」と称して酒の席でそういった恨み言を一方的に話すことが多い。

あとは同じく「報告」と称して、うまくいった仕事の自慢。

ちなみにこちらも同じように「報告」すると、やっぱり興味なさそうである。

もう一つ面白くないのは彼が度を越した反差別・平等至上主義者であり、これだけ隣国が敵対国家だらけなのにもかかわらず目を輝かせて非武装中立の必要性を語る反戦バカだということだ。

例えば私が「おばちゃんには方向音痴が多い」と言ったら、

「それは女性差別じゃないの?」

と真顔で非難しやがるのだ。

めんどくさい奴だと思わないか?

他にも「あなた」や「お宅」などの二人称単数を使って呼ばれるのを嫌うなど、会話において本来なら留意する必要のないNGワードも多く、どうりで後輩やら上司に嫌われるわけである。

何年か前に飲んだ時など、奴は酔ったはずみで当時の安倍内閣が意図していた憲法改正について私に議論を吹っかけてきたことがあり(むろん彼は反安倍内閣だった)、私も酔っていたので改憲賛成どころか核保有論者だと正直に言ってやったとたん、「右翼」だの「軍国主義者」だの金切り声で私をファシスト扱い。

こんな奴と楽しく飲めるだろうか?

よって今回も寝たことにして、既読にならないようラインを敢えて開かず見て見ぬふりを決めこみ、イップ・マンを見ながら、“空気敵”相手に大技をくらわしていた。

が、

まさか電話をかけてくるとは思わなかった。

それも携帯ではなくイエ電の方。

意地でも話をしたいようだ。

出るしかないのかよ、めんどうくさいな。

素晴らしい夜のひと時を強制終了された気分であった。

「もしもし」

私はさっきまで見えない敵と戦っていたので、多少息を切らせながら電話に出た。

「悪いね、起こした?でもさ、どうしても話したいことがあってさ」

気持ち悪い男である。こんな夜中に大の男にそんなこと言われて気持ちがいいわけがない。

実は前からY田はゲイではないかとも疑っている。しゃべり方もそれっぽいし。

「いや実はさ、今日N嶋にさ…。どうしたの?息荒いよ」

私は年甲斐もなく“ひとり組手”してたからまだ呼吸が荒かったようだ。
しかも結構飲んでいた。

そして、その酔った頭で「何とか切り上げれないだろうか?」と私は考え始めてしまっていた。

「どうしたの?具合悪いの?」

Y田はいつものオネエ言葉で訊ねてきた。

そうだ仮病を使おうか。

病気で寝てたことにすりゃあ、奴も長話してこんだろう。

「いやあ、実はその今日病院行ってきまして、検査したんですけど…」

言い訳しても仕方ないが、私の頭はこの時泥酔の一歩手前の状態だったのだ。

だが、その思考回路で考えた仮病であったとしても、

そして、たとえ相手が誰であったとしても、なっていい仮病と悪い仮病があったと今では反省している。

「え、検査って…。まさか」

「気を付けてたんですけどね…、陽性だったんです。コロナの

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