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本格的不良俳優のさらなる転落 ~2003年・京都市下京区放火殺人事件~

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大地義行という俳優を、ご存じの方はどれだけいらっしゃることだろうか?

もしご存じならば、その方はヤクザものの映画やVシネマが好きで、それもかなり昔からのコアなファンだと言えるだろう。

大地義行、本名平野善幸は、1964年大阪府生まれ。

さまざまな経歴を経た後、1992年より俳優活動を開始。

Vシネマを中心に出演していたようだが、1998年の『JUNK FOOD』の出演を皮切りに、2000年から2002年にかけて『新・仁義なき戦い』、『荒ぶる魂たち』、『新・仁義の墓場』に出演。

コンピューターのスクリーンショット

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『新・仁義なき戦い』などのこれら三作の映画の出演者はベテラン俳優が目白押しであり、大地はほんのチョイ役の暴力団組員を演じていたにすぎなかった。

しかし、その毒々しい存在感と迫力は本職級であり、並み居る有名な役者たちに埋もれることが全くないほどのインパクトを残して「本格的不良俳優(ヤクザ俳優)」と注目を浴び、以後の活躍が大いに期待されるようになった。

だが、2002年の『新・仁義の墓場』以降に、彼の姿をスクリーンの中で見ることは不可能になってしまっている。

なぜなら殺人で逮捕され、無期懲役で服役しているからだ。

2003年1月16日の事件

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2003年1月16日午後2時。京都市下京区の木造二階建ての大地の自宅から出火して、二階の一室24平方メートルが焼ける火事が発生。

そして鎮火した後の焼け跡から、女性の焼死体が発見された。

死体は、仲居手伝いの丸山珠子さん(仮名・47歳)で、大地とは内縁関係にあった女性であったが、手足を電線コードやテープのようなもので縛られた状態で焼死していたことから、京都府警は放火殺人と見て捜査を開始する。

一方の大地は、火災時に現場にいたのだが、言動がおかしかったために、駆け付けた京都府警によって取り調べを受けた結果、覚せい剤反応が出たために逮捕されてしまっていた。

彼は覚せい剤の常用者だったのだ。

新聞記事の一部

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その後、大地は傷害事件で執行猶予中の身でもあったことから、覚せい剤の件で1年2か月の実刑判決を受けて服役することになったのだが、捜査の方は、状況証拠から明らかに怪しい大地を有力な容疑者として進められ、同年7月30日に、殺人・現住建造物放火の疑いで再逮捕となる。

大地は、女性を縛ったのは同じく覚せい剤の常用者だった彼女が暴れたからであるとし、火事はその時、部屋で点けていたストーブから出火したもので、自身が火をつけたわけではないと主張。

しかし、火事の時に、大地は救出しようともせずに、ぼんやりとしていたという住民の証言が決定打となって、大地は犯人と断定されてしまう。

グラフィカル ユーザー インターフェイス

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2005年3月の京都地方裁判所の判決では懲役15年(求刑無期懲役)が言い渡されたが、ここでも大地は無罪を主張したため、大阪高等裁判所の二審では「反省の態度が見られない」と一審判決を破棄され、求刑通りの無期懲役が言い渡された。

2006年の最高裁でも、上告が棄却されて無期懲役の判決が確定。

もともと転落していた彼は、さらに落ちることができる最底辺まで落ち込んでしまった。

大地義行は、2022年の現在も徳島刑務所で服役している。

近所での評判

大地義行はヤクザ俳優として評価されたが、それはどうやら演技ではなかったらしい。

普段の大地は、商品にケチをつけては金を払わなかったり、近所での工事がうるさいと怒鳴り込んだりと、居住する地域では悪名高き迷惑住民。

火災で死亡した女性以外にも関係を持っている女性がおり、痴話げんかが高じて、時々自宅前の路上で暴力をふるったりもしていた。

また、映画の撮影においても現場に遅刻することがよくあり、怒られると逆ギレするなどなかなかのトラブルメーカーだったから、高く評価された演技は素だったのだろう。

「本格的不良俳優」ならぬ、単なる「本格的不良」だったと報道するマスコミもあった。

そんな彼だから近所の住民もよく思っておらず、「女性を助けようともせず、ぼんやりと座っていただけだった」という証言までされた。

当時の大地の人となりを知るそれらの人々には、「やっていないとは思えない」と言われている始末である。

そんな彼は今でも獄中で無罪を叫び続けており、支援する弁護士も現れて再審請求の活動がなされている。

確かに支援者らの主張によると、検察の提示した証拠には矛盾が多く、女性を助けようとしなかったどころか、燃え盛る家の中に入って救出に向かおうとしていたと、当時から証言していた人間も存在しており、今後の展開によっては、無実を勝ち取って出てくることがあるかもしれない。

しかし、彼は現在57歳。

獄中で、あまりにも多くの時間を失ってしまった。

自由の身になったとしても、もう彼の姿をスクリーンで見ることはできないだろう。

たとえ、この事件はやっていなかったとしても、今までさんざん周囲に迷惑をかけてきたのだから、人を殺したと疑われても仕方なく、自業自得だという人もいるかもしれない。

しかし同時に、彼の登場シーンを改めて見てみると思うのだ。

画面の中でヤクザを演じる大地は、本物の悪党そのものの脂ぎった嫌らしさを見事に醸し出し、ベテランのコワモテ俳優相手でも、全く迫力負けをしていない。

こんな毒気は、演技や稽古で作り上げられた悪役では、絶対に出せないだろう。

やっぱり、大地義行の姿をもっと映画で見たかった。

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R40「城東工業高校のテル」はいま

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映画版 ビー・バップ・ハイスクール(BE-BOP-HIGHSCHOOL)をご存じだろうか?

リアルタイムで記憶にある方の大多数は、おそらく40歳を超えているはずだ。

同作品は、1983年から2003年まで講談社のヤングマガジンで連載されていた人気漫画『ビー・バップ・ハイスクール』を原作とした日本映画である。

仲村トオル、清水宏次朗、中山美穂らが主演した1985年(昭和60年)の第1作目は、14億円を超える配給収入を記録したヒット作となり、1988年までに計6作が製作された。

不良映画の金字塔的作品であり、この当時の中高生、特に劇中の登場人物たちと同じ層の者たちに大いに支持された。

この映画の魅力の一つは、走る電車からの鉄橋ダイブシーンなど、現在なら考えられないような危険なアクションだ。

一歩間違えば死んでもおかしくないシーンが目白押しで、主演の仲村トオルはじめ出演者たちはケガが絶えず、命の危険にもさらされたという。

そしてもう一つの魅力は、主役である仲村トオルや清水宏次朗以外のキャストたちだ。

敵役はもちろん、脇役やエキストラに近いチョイ役まで、不良を演じているキャストたちはいずれも異様に迫力があった。

それもそのはず。

彼らの多くは、本物かつ現役の不良少年たちだったからだ。
この映画では出演者を一般公募、そのオーディションには、役者だけではなく現役のヤンキーや暴走族が多く集まり、主要な役をキャスティングされていた。

そんなキャストたちだったからこそ、撮影現場でガンを飛ばし合ったり、ロケ地で地元の不良とモメてさらわれたりなど、ありえないハプニングが続出したという。

当時人気絶頂だったヒロイン役の中山美穂などは、演技とはいえ、これら本物たちの迫力におびえるあまり、二作目出演後に降板してしまった。

だが、いざ撮影となれば凄んだり、睨み合ったりするシーンでの演技指導は必要ない。

存在しているだけで役者では絶対に出せない凄味があって、荒唐無稽なシーンも多かった同作品に、不良映画としてのリアリティーを、問答無用で備えさせることができた。

私が同作品を初めて観たのは、6作目がレンタルビデオ化されたばかりの頃だったが、こういった不良たちにカツアゲされた経験もあったため、画面越しでも震え上がったものだ。

そんな迫力満点のキャストたちの中でもひときわ異彩を放ち、伝説となった男がいた。

1986年、シリーズ2作目の『ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎哀歌』で「城東工業高校のテル」こと藤本輝男を演じた白井光浩だ。

白井演ずる映画版のテルの貫禄は、原作を上回っていた。

ご覧の通りとても高校生には見えない本職級の悪人相だったが、白井は出演当時正真正銘の18歳だったらしいから驚きだ。

劇中でのテルは容貌そのままの凶悪な高校生で、得意技は不意打ちと集団リンチ。

数を恃んで他校の不良を襲って変形学生ズボンを奪う「ボンタン狩り」を行い、仲間と共に主人公のトオル(仲村トオル)を拉致して、口に折った鉛筆を入れて殴りつけるリンチを行うなどの悪行三昧。

そのインパクトは絶大で、上述の「ボンタン狩り」や、見掛け倒しで根性がない者を意味する「シャバ憎」「シャバい」などの用語を世に広く知らしめ、

「城東は~、数が多いだけの~、チンピラの~集まりだってぇ~、ほざいたなぁ~!!」

「そのツラに穴あけてぇ~、二度とデケー口きけねーようにしてやろうかぁ~、あ~~~~!!?」

などなど、テルのセリフや立ち振る舞いを、当時のヤンキー少年ばかりか真面目な中高生たちまでもが、こぞって真似するようになった。

三十年以上経過した現在でも、当時少年時代を送った人の中で覚えている方は、決して少なくはないのではないだろうか?

そんな伝説的なキャラであるテルを見事に演じた白井光浩だが、惜しくもこの作品に出演してから俳優活動を行うことなく、一般人として自営業に従事。

「城東工業のテル」の鮮烈な印象だけが、当時中高生だった人々に記憶され続けた。

だが2012年、白井光浩は突然表舞台に現れて、役者活動を再開する。

『ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎哀歌』から26年。

すっかり四十路を過ぎた白井も、それなりに人生の年輪を刻んだ味のある中年の男に変貌していた。

そして映画やVシネマに出演する一方で、落語家としても精力的に活動し始める。

同時に、映画『ビー・バップ・ハイスクール』のオールドファンたちのイベントにも顔を出し、2019年にはYouTuberとして『テルチャンネル』を開設。

『ビー・バップ・ハイスクール』のロケ地を訪ね歩いたり、当時の出演者を招いて対談し、撮影の裏話を披露するなど、往年のファンを歓喜させている。

あのキレッキレの極悪ぶりをスクリーンの中で見せていたテルは、もうすっかり丸くなったお茶目なおじさんで、料理に舌鼓を打ったり、喉を鳴らして酒をうまそうに飲んだりオッサン全開だ。

一見すると中年男のどうでもいい動画ではあるが、当時の映画で見せた危険なテルを覚えており、別の場所とはいえ、同じ時代を送った者の一人としては、そんなオッサンぶりがほほえましく思えてしまう。

そして『テルチャンネル』を観た後で、再び映画『ビー・バップ・ハイスクール』を観れば、また違った味わいを楽しむこともできるのだ。

今後のテルのますますの発展と活躍を、私は陰ながら応援したい。

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